映画

「ハリー・ポッター」におけるイギリス階級意識と英語の発音

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先日テレビを観ていたら映画「ハリー・ポッター」が金曜ロードショーで放送していました。昔セリフを覚えるほど観た映画ですが、当時は日本語吹き替えで観ていました。

 

大学の授業で学んだのですが、「ハリー・ポッター」からはイギリスの伝統的な階級意識が読み取れます。また、話されている英語はイギリスらしく様々な方言があります。今回はそういったイギリスらしい要素を映画から考察していきます。

 

 

目次

英国社会における階級について

イギリスは現在でも、生活のあらゆる領域における区分としての階級があります。この階級は流動的でなく、家柄や職業によって決まっており、恒常的であるといえます。つまり、イギリス社会における階級はなかなか変えることは難しいということです。

 

職業的グループでの分類

他の国では革命などによって王室や貴族制度は廃れていきましたが、イギリスにはそれが色濃く残っています。階級は職業によっておおまかに分類されます。

上流階級(Upper class)→貴族家系

中流階級(Middle class)

   上・中流(Upper Middle)→社長・弁護士などの専門職

   中・中流(Middle middle)→事業経営者や先生などの中間職

   下・中流(Lower middle)→非筋肉労働の熟練職

下流階級(Lower class)→筋肉労働の熟練食や半熟練職、非熟練職

このように分類されます。これを「ハリー・ポッター」の世界に当てはめてわかりやすく考えていきます。

 

 

「ハリー・ポッター」の中での階級

まずハリーのライバルとして描かれる嫌な奴のドラコ・マルフォイです。彼は間違いなく上流階級(Upper class)の人間です。これでもかというくらいに意地悪に描いているのは、イギリス人が上流階級に対してそのような思いを抱いているからかもしれません。

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次にロン・ウィーズリーです。彼はハリーの良き友人で、落ちこぼれのように描かれていますが、魔法族出身の上流階級(Upper class)です。ただし、マルフォイとロンのやり取りをみていればわかるように、上流階級の中でも上下関係があるようです。

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マルフォイは一流ですが、ロンはやや落ちこぼれた Upper class に描かれています。ロンに関しては、ほぼ中流階級に落ちぶれているといっても差し支えないでしょう。

 

では、ハーマイオニー・グレンジャーはどうでしょうか。彼女は中流階級(Middle class)の出身ですが、必死に勉強してホグワーツに入学したことがわかります。彼女の両親はマグルの歯科医師という設定になっているので、中流階級の中でも上・中流(Upper Middle)か、中・中流(Middle middle)に分類されます。

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続いて、ハリーの里親であったダーズリー家について考えてみましょう。彼らはケチですが、そこそこ裕福な一般の家庭という描かれ方をしており、ミドルクラスの中でも、中・中流(Middle middle)に分類されます。

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こうしてみると、はっきりと階級がわかるような構造になっていることがわかります。では、ハリーはどうでしょうか。ハリーは両親の階級に基づくならば、上・中流階級に分類されるのですが、彼自身はダーズリー家で育ったので、階級意識をあまり持ちません

 

イギリス人にとって当たり前の階級意識を強く待たないハリーが主人公というのがイギリスで「ハリー・ポッター」人気な要因の一つかもしれません。

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最後に下流階級(Lower class)として描かれているのは、用務員のフィルチハグリッドです。きれいとはいえない服装や、作者がハグリットを悪役にはしていないが、あまり聡明でないように描いているのは、決して偶然でないでしょう。下流階級は “Working class” とも呼ばれます。

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英語の発音

「ハリー・ポッター」における英語の発音もキャラクターによってによって異なっています。イギリスでは話し方によって、社会階級を判断すると考えている人が33%いると言われています。

 

特に下流階級(Lower class)の人々は発音や文法がかなり違います。有名なコックニー(Cockney)は、ロンドンの労働者階級で話されている英語で、“day” は「ダイ」と発音され、”half” は “h” が落ちて「アーフ」と発音されます

 

余談ですが、このような英語を話す有名人にはサッカー選手のデイビッド・ベッカムがいます。彼は労働者階級出身で昔は訛りがかなりありましたが、有名選手になりメディアに出る機会が増えるにつれて、英語を矯正していることがわかります。

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「ハリー・ポッター」における発音

階級によって話し方が完全に変わるというのは大昔の話で、現在はそうとも限りません。下流階級の人が気取って上流階級の言葉を話すということもあります。

 

ハリーやマクゴナガル先生はBBCのアナウンサーの発音(BBC English)、王族の発音と言われている容認発音(Received Pronunciation, RP)で話します。また、中流階級のハーマイオニーもRPで発音します。

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逆にロンは一応は上流階級ではありますが、南東部訛り(河口域英語)で発音します。河口域英語とは、RP話者とコックニー話者のどちらにも違和感を覚える新中間層により、創りだされてきた新しい英語です。

 

上流階級らしいRPが「お高くとまった」印象があるのに比べて、コックニーは下町らしい「俗っぽい」印象があります。ロンが話す河口域英語はコックニーに似た特徴を持っています。

 

また、マイケル・ガンボンは初代ダンブルドア役のリチャード・ハリスに敬意を払い、アイリッシュアクセントで演じていることでも有名です。

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逆に用務員のフィルチハグリッド、ナイトバスの乗務員と運転手は非常に典型的なワーキングクラスとして描かれているので、かなりの訛り(コックニー、ロンドン訛り)があります

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まとめ

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イギリスに存在する階級社会について理解してから「ハリー・ポッター」を観るとまた違った発見があるかもしれません。特にロンやハグリットの話す英語の発音は非常に特徴的で勉強になります

 

ちなみに作者のJ.K.ローリングは、一人の男の子をもつシングルマザーで、この本が売れる前は、金銭的にかなり苦労していたそうです。(それでも本をかけるくらいの学があるのだから)当時は ”Lower middle” でした。

 

その彼女だったからこそ、他の階級よりも中流階級を非常に好意的に書いており、それが多くのイギリス庶民に広く愛読されている理由の一つだと言えます。

 

イギリスのコックニーについて興味のある人は、コックニーを話す主人公を矯正してRPを話させるようにする過程が描かれている有名な映画「マイ・フェア・レディ」を一度観てみることをおすすめします。

 

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